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01 超伝導 超伝導量子コンピュータ研究開発

     

蔡 兆申(超伝導量子シミュレーション研究チーム チームリーダー)

超伝導状態とは金属の抵抗がゼロになる奇妙な現象で、この状態では、すべての伝導電子は単一な「巨視的量子状態」と呼ばれる特殊な量子的な状態に落ち込む。巨視的量子状態では、自由度は、巨視的位相と電荷数の二つのみに限定され、大変秩序だった単純な物理系が形成される。
原子ポテンシャルに束縛された電子のように、束縛状態にある量子ではエネルギーの量子化が起こる。超伝導の巨視的量子状態では、ジョセフソン接合の作り出す束縛ポテンシャルにより巨視的量子状態に量子化されたエネルギー準位が出現する。これまでに様々なタイプの超伝導量子ビットが、ジョセフソン接合を含んだ超伝導回路によって作り出されている。 最初に実現した超伝導量子ビットは「電荷量子ビット」と呼ばれる回路であった[Nature 398, 786, 1999]。この量子ビットは電子対をためる超伝導の「島」構造をもつことを特徴としている。この回路はその後様々な改良が施され、トランズモンと呼ばれる長寿命の量子ビットが作り出された。これを基本素子とするゲート操作に基づく超伝導量子コンピュータの研究が現在世界中で大規模に進められている。超伝導量子コンピュータに基づく世界初の商用量子コンピュータ(IBM社)や、量子超越性のデモンストレーション(Google社)などは特記できる世界的な研究開発状況であろう。
2003年には、磁束量子をためる超伝導のループ構造を持つ「磁束量子ビット」が開発された。この量子ビットは、現在では量子アニーリング回路に応用され、4000ビット級の量子アニーリング集積回路がD-Wave System社により開発されすでに市販されている。 我々の研究室では量子コンピュータに向けた様々な側面の研究開発を行っている。量子ビットの集積化に際して発生する3次元配線問題を解決するため、疑似2次元ネットワークを用いた新規な量子コンピュータのスケーラブルなマイクロアーキテクチャを提案し[New Journal of Physics, 22, 043013, 2020]、それに基づく集積量子チップを試作した。この回路方式の特徴は、ビット間の最近接結合を保ちつつ、全量子ビットをチップ周辺部に配置することを可能にする。したがって、この量子ビットの配置は、従来の2次元広帯域配線技術を使い入出力配線を実現できる利点を持つ。
図は試作した16ビットチップ擬2次元ネットワークを使った集積超伝導量子ビットコンピュータチップ(4 x 4アレー相当)である。この回路の性能評価と、更なる集積化の研究を進めている。
我々はまた、クラスター状態を利用する一方超伝導量子回路の研究を進めている。この研究では、超伝導経路で時間領域での1Dクラスター状態の生成に初めて成功した[arXiv:2105.08609]。量子ビットを時間領域で繰り返しリサイクルして使うことにより、2つの物理的量子ビットのみにより、4量子ビットの相当の線形クラスター状態を、59%の高忠実度をもって生成することに成功した。さらに、生成された4量子ビットは完全多体エンタングルメント(GME)状態にあることをprojector witnessの期待値を調べることにより確認した。この成果は、物理的超伝導量子ビットの数よりも大きいビット数のエンタングル状態を生成することが可能であることを示しており、量子ビット空間領域の複雑さが軽減され、将来的にはエラー訂正可能な3Dクラスターの生成につながる可能性がある。また擬2次元ネットワークを使った18ビットのクラスター状態生成用量子チップも試作した。
我々は、超伝導量子ビットを用いた量子アニーリング回路の研究も行っている。共振器のネットワークを介した、新規な全結合型の量子アニーリング回路のアーキテクチャの提案行った[J. Phys. Soc. Jap. 88, 061011, 2019]。この方式に基づく8ビットの全結合型量子アニーリングチップを試作し、その性能評価を行っている。 img 図 擬2次元ネットワークを使った16ビットチップ集積超伝導量子ビットチップ。4 x 4アレーに相当する回路であり、左の挿入図は量 子ビット部とエアブリッジを用いた共振器の交差部の拡大図である。

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量子コンピュータ研究センター 研究体制

量子技術イノベーション拠点

量子技術に関して、これまで我が国の大学・研究機関等で長年にわたって蓄積してきた研究や人材の厚みを一層増し、かつ、基礎的・基盤的な研究の多様性を確保する観点から、こうした大学・研究機関における幅広い研究等に対し、国として継続的な支援を充実・強化していくことが重要である。
その上で、我が国が強み・競争力を保持する技術領域を中心として、国際競争力を確保・強化する観点から、技術の特性に応じて人材・技術等を結集し、基礎研究から技術実証、オープンイノベーション、知的財産管理、人材育成等に至るまで産学官で一気通貫に取り組む拠点を形成することが極めて重要である。こうした国際的な研究開発拠点として、新たに「量子技術イノベーション拠点(国際ハブ)」を形成する。
同拠点は、国の研究機関や大学等を中核として、国内外から優れた研究者・技術者を結集するとともに、企業等から積極的な投資を呼び込み、大学・企業間の有機的な連携・協力体制を構築する。同時に、複数の大学・大学院等と連携・接続し、将来を担う量子技術分野の人材育成を行う中核拠点としての役割も整備・構築していく。
・QIH 量子技術イノベーション拠点

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