野口 篤史
ハイブリッド量子回路研究チーム チームリーダー
研究概要
量子が量子を制御する。異なる量子系を結合させ、新たな機能を作り出すことを目指して研究をしています。例えば、超伝導回路で作製された共振器は、光子を長い時間保持することができますが、この光子を超伝導量子ビットを使って制御することで、誤り訂正されたエラーの少ない論理量子ビットを構成することができます。また、私たちのチームでは、さらに長時間状態を保持することができる量子系として、浮揚電子系に着目しています。イオントラップとして広く用いられている四重極電場によって電子を浮揚させ、環境から完全に隔絶された量子系を実現します。電子は質量が軽いために、浮揚電子の振動は大きな電気双極子を構成し、また高速に動作します。大きな電気双極子は、超伝導量子ビットとの結合を可能にし、さらに高性能なハイブリッド量子系が実現します。
このように、異なる量子系をそのまま結合させるだけでなく、その制御技術や個々に優れた実験技術自体を融合させ、より高性能な量子技術の開発を目指しています。
主な研究テーマ
・超伝導回路を用いた論理量子ビットの実装
・浮揚電子系による超高性能量子系の実現
・超伝導回路イオントラップの研究
代表的な研究成果
・Aharonov-Bohm effect in the tunnelling of a quantum rotor in a a linear Paul trap,
A. Noguchi, Y. Shikano, K. Toyoda, S. Urabe, Nature Communications 5, 3868 (2014)
・Ground state cooling of a quantum electromechanical system with a silicon nitride membrane
in a 3D loop-gap cavity, A. Noguchi, R. Yamazaki, M. Ataka, H. Fujita, Y. Tabuchi, T. Ishikawa, K.
Usami, Y. Nakamura, New Journal of Physics 18, 103036 (2016)
・Qubit-assisted transduction for a detection of surface acoustic waves near the quantum limit,
Atsushi Noguchi, Rekishu Yamazaki, Yutaka Tabuchi, Yasunobu Nakamura,
Physical review letters 119, 180505 (2017)
・Single-photon quantum regime of artificial radiation pressure on a surface acoustic wave
resonator, A. Noguchi, R. Yamazaki, Y. Tabuchi, Y. Nakamura, Nature Communications 11, 1183
(2020)
・Fast parametric two-qubit gates with suppressed residual interaction using a parity-violated
superconducting qubit, A. Noguchi, A. Osada, S. Masuda, S. Kono, K. Heya, S. Piotr Wolski, H.
Takahashi, T. Sugiyama, D. Lachance-Quirion, Y. Nakamura,
Physical Review A 102, 062408 (2020).
電子トラップ設計図