kawakami

川上 恵里加

浮揚電子量子情報理研白眉研究チーム 理研白眉チームリーダー

研究概要

私達は、ヘリウム表面上の電子を量子コンピュータの応用へ向けた研究をしています。この物理系では、電子が真空中に存在しているため、欠陥や不純物の影響を受けません。このようにクリーンな環境のおかげで、ヘリウム表面上の電子の量子状態は長いコヒーレンス時間を持つことが期待されます。私達はこれまで、多数の電子水素原子のスペクトラムに見られるのと似た量子状態(リュードベリ状態)の研究をしてきましたが。これからは、これまでの研究をさらに発展させて、単一電子のスピン状態を制御することを目指します。
他にも、ヘリウム表面上の電子のウィグナー結晶状態を用いてスピン液体と呼ばれる新奇的な状態をシミュレーションすることも構想しています。
また、スケーラブルな量子コンピュータ実現のために必要不可欠な低温電気回路の実現も目指しています。今は特に、低温マイクロ波発振器の開発に取り組んでいます。

主な研究テーマ

・ヘリウム量子コンピュータ
・低温マイクロ波発振器
・スピン液体シミュレーション

代表的な研究成果

・Image-charge detection of the Rydberg states of surface electrons on liquid helium.
E. Kawakami, A. Elarabi, D. Konstantinov, Physical Review Letters with Editors’ Suggestion, 123,
086801 (2019).

・The impact of classical control electronics on qubit fidelity.
J.P.G. van Dijk, E. Kawakami, R.N. Schouten, M. Veldhorst, L.M.K. Vandersypen, M. Babaie, E.
Charbon, and F. Sebastiano, Physical Review Applied, 12, 044054 (2019).

・Gate fidelity and coherence of an electron spin in a Si/SiGe quantum dot with micromagnet.
E. Kawakami, T. Jullien, P. Scarlino, D. R. Ward, D. E. Savage, M. G. Lagally, Viatcheslav
Dobrovitski, Mark Friesen, S. N. Coppersmith, M. A. Eriksson, and L. M. K. Vandersypen,
Proceedings of the National Academy of Sciences 113, 42, 11738 (2016).

・Electrical control of a long-lived spin qubit in a Si/SiGe quantum dot.
E. Kawakami, P. Scarlino, D. R. Ward, F. R. Braakman, D. E. Savage, M. G. Lagally, Mark Friesen, S.
N. Coppersmith, M. A. Eriksson, and L. M. K. Vandersypen, Nature Nanotechnology 9, 666-670
(2014).

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スケーラブルなヘリウム量子コンピュータ。1つ1つの電子(青い丸)が1量子ビットとしての役割を果たす。電子は2次元格子に並べられている。ヘリウム表面上の電子同士には長距離相互作用(クーロン相互作用)が働く。その相互作用の大きさは、電子同士が1マイクロメートルほど離れていても0.5GHzほどと比較的大きい。この相互作用は2量子ビットゲートを実現する際に重要となる。

関連リンク

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